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願文

平家納経の願文は、願主である清盛自らが遺したものであると知られています。

そこには、清盛自らの「平家納経」の発願の動機が真摯な祈りをもって描き出されています。
 
願文は漢文で書かれておりますが、分かりやすいように読み下し文に改めると以下のようになります。

弟子清盛敬って白(もう)す。

・・・伏して惟(おもん)みるに安芸の国、伊都伎嶋の大明神は、・・・厥(そ)の霊験威神、言語道断たる者なり。

是に於いて、弟子本因縁ありて、専ら欽仰を致す。利生掲焉(けちえん)たり。

久しく家門の福縁を保ち、夢感誤りなく、早(すみや)かに子弟の栄華を験す。
今生の願望已(すで)に満ち、来世の妙果宜しく期すべし。

相伝えて云う。当社は是観世音菩薩の化験なり。
又、往年の比(ころ)、一沙門有り。

弟子に相語りて曰く。
菩提心を願うの者は、この社に祈請(きせい)せば、必ず発得すること有り。
斯(こ)の言を聞きし自(よ)り、偏に以って信受す。帰依の本意、蓋し茲(ここ)に在り。
・・・説きて経と為る。是を妙法と謂う。二十八品、顕れて人と為る。これを観音と謂う。
・・・是を以って弥報賽(いよいよほうさい)を致して、浄心を発さんと欲す。
妙法蓮華経一部二十八品、無量義・観普賢・阿弥陀・般若心等の経、各一巻を書写し奉り、便(すなわ)ち金銅篋(はこ)一合に奉納して、これを宝殿に安置す可し。
弟子並びに家督三品武衛(かとくさんぽんぶえい)将軍、および他の子息等、兼ねて舎弟将作代匠(しょうさくだいしょう)、能州・若州の両刺史、門人家僕、都盧(すべて)卅二人、各一品一巻を分ち、善を尽くし、美を尽くさしむる所なり。
花敷蓮験(かふれんげん)の文、吾が家の合力(ごうりき)より出でたり。玉軸綵牋(ぎょくじくさいせん)の典、一族の同情より成る。
蓋し、広く功徳を修し、各利益を得んが為なり。二年の天、暮秋の候、自ら宝前に参り、敬みて華偈(けげ)を講ず。
明年より始め、将に卅講を修せんとす。以って年事と為し、失墜す可からず。

長寛二年九月 日 弟子従二位行権中納言兼皇太后宮権大夫平朝臣清盛敬って白す。


 

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