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宝刀②

平家に伝わる宝刀は「宝刀①」でご紹介した小烏丸だけではありません。
ここではさらに2振りの不思議な刀についてご紹介したいと思います。

そのひとつは抜丸、あるいは木枯という名で知られる霊刀です。
昔、伊勢国の鈴鹿山の近くに、貧しいながらも敬虔な男が住んでいました。
男は何とか貧しい暮らしから抜け出したいと思い、熱心に伊勢神宮に参拝をしておりました。
するとあるとき、「深山に分け入り、猟をして妻子を養うがよい」との啓示がありました。
信心深い男はこの霊言をたよりに、鈴鹿の山麓に移り住みます。
しかし、慣れない猟はなかなかうまくいきません。
神の言葉にも不安を持ち始めたころ、男は三子山で奇妙な太刀を手に入れました。
すると、これまでとは打って変わり、目に入った獣という獣を間違いなく仕留められるようになったのです。
男はこれこそアマテラス大神からの贈り物、と肌身はなさず持ち歩くようになりました。
ある夜のこと、男は大きな木の下に隠れ、太刀はその木の幹に立てかけて鹿を待ち伏せていました。
そのまま夜を過ごした男が翌朝木を見上げると、緑で青々としていた大木が一夜にして枯れているのでした。
男はこの剣が霊剣であることを確信し、木枯と名付けました。
ちょうどこのころ伊勢守であった忠盛は、話を聞いてこの剣をぜひ見たいと思い、猟師を呼び寄せました。
実際に手にとって見ると、なんと得がたい名剣でしょう。忠盛は三千石の土地と引き換えに木枯を譲り受けました。
こうして男は念願どおり金持ちになることができたのです。
 
さて。それからしばらくの後、忠盛が都に帰り、六波羅で昼寝をしていたときのことです。
池から大蛇が現れ、忠盛をひと呑みにしようとします。寝ている忠盛は前後不覚。絶体絶命のピンチです。
しかし、あわやというところで枕もとの木枯がひとりでに鞘から抜け、派手な音を立てて倒れました。
その音で目を覚ました忠盛が見れば、木枯が大蛇に切っ先を向けて倒れて、池の主はそれに恐れをなして池に逃げ戻っていくところでした。
このとき以来、木枯は抜丸とも言われるようになりました。
後にこの刀は頼盛に相続されたとされていますが、平家滅亡後の消息はわかっておりません。

もう一つの剣は、清盛が厳島の神から授かった宝剣です。
厳島神社の改修に携わっていた清盛は、そのすべてが修築された夜、徹夜で祈願を行っていました。
その折、夢うつつに神殿の扉が開き、美しい童子が現れ、清盛に告げました。
「我、厳島大明神の使いなり。汝、皇室の守りたるべし」
童子は銀で蛭巻に巻いた小長刀を清盛に差し出しました。
清盛がはっと目覚めると、枕もとには霊刀が立てかけられていました。
手にとって見ると、神からの啓示がありました。
「そなたの一生の間、守ってつかわす。ただし、悪行あらば子孫までには及ぶことなし。」
以来清盛が位人身を極めたのは周知のとおりですが、予言は悪いほうも的中し、ついには刀を厳島の神に奪われ、子孫は西海に沈むこととなったのです。
 

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